• 2017.02.0108:00
  • 企業/業界研究

【中川淳一郎コラムvol.19】悩み相談)「結局学歴とか会社とかって大事だと思うんです。で、やっぱり広告代理店ってモテるんですか?」

Q「結局(人生で)学歴とか会社のネームバリューとかって大事だと思うんです。で、やっぱり広告代理店ってモテるんですか?」
 
なんで学歴・会社歴の話から突然広告代理店に特化した話になるかの脈絡のなさがよく分からないが、あなたの質問は「学歴(出身大学名)及び入社した会社の『格』というものは人生において重要か?」という話と、単純な興味話としての「広告代理店社員になるとモテるか?」という話だということで先に進む。
 
「だと思うんです」ということについては「それなりに確信がある」ということですね。そして「やっぱり広告代理店って……」は「広告代理店はモテる」という仮説があるということですね。この質問からはこう読み解くことができます。
 
まずは前者から解説しましょう。学歴・社名については「明確な実力者にとっては意味はないが、それ以外の人にとっては、大いに意味がある」と言えるかもしれません。というのも、就活しようにも転職しようにも、起業しようにも、重要なのは「人物像」というものです。性格の良さやルックスの良さに加え、「ハキハキと喋る」「マナー・立ち居振る舞い・所作が美しい」といったものがある人材は強いのですが、履歴書に「東京大学法学部卒業・マッキンゼー・アンド・カンパニー入社」なんて書いてあった場合、さらに「おぉぉぉ! すげー!」となりますよね。結局こういうことなんですよ。
 
他人様が、あなたを判断する時間は短いので、その時に少しでも優位な情報を事前に伝えておこう。
 
そういった場合に「東京大学」とか「国家公務員I種合格」とか「ボストン・コンサルティング出身」みたいな情報があったら、より優位になるのは自明ですよね、ということ。そういった方々が、転職市場で自らの望む職場への所属が可能になるのを横目で見て「あの野郎、過去の肩書ばかり見られてマジむかつく」と思うかもしれませんが、彼らはそれまで、その経歴を履歴書に書くためにとんでもなく努力をしてきたという実績が間違いなくある。
 
そういった面も含めて評価されるのが「学歴」「会社のネームバリュー」なのです。日本は、案外そこはフェアにできています。「じゃあ、その立場を20代後半までに得られなかった私にチャンスはないのですか!」なんて言いたくなるかもしれませんが、その場合は学歴、会社のネームバリュー以外の様々な実績をキチンと伝えましょう。それでちゃんと評価はしてもらえるはずです。
 
以前、人材研究所代表取締役社長の曽和利光さんから伺った話が「社歴」というものの重要性です。新卒で入った会社がどこなのか? ということですね。転職をしようとした時、最初の会社の「格」がその後の転職の成否も左右するということです。新卒段階で超人気企業に入れた人は、ある程度の地頭があり、コミュニケーション能力や社会性も身についている、と判断される、ということです。
 
どうも世の中そうなっているらしいので、世間的には「いい会社」に最初から入るにこしたことはない、ということです。人生においては「正しいこと」「不当なこと」は色々ありますが、「いい大学を出ていい会社に入る」という選択がそれなりに「正しいこと」になるという社会的定説がある場合は、そこに従うのも一つの人生です。
 
そして、これについては、私も実感することがあります。私は27歳で無職になり、フリーライターになったのですが、その無職状態を脱した後に仕事をくださった編集者が私を取材先に連れて行く時に大抵言っていた一言があります。私は当時Tシャツ、短パンで取材に行っていましたが、いかにも怪しい貧乏人といった雰囲気を醸し出していたと思います。そんな私のことを彼らが紹介する時の決めゼリフが、これです。
 
「このライター、こう見えても一橋大学出身で、今年の春まで博報堂にいた人なんですよ……。突然会社辞めちゃって、今、こうしてライターをやっていますが(笑)」
 
編集者からしたら「一応身元はしっかりしていますよ」「こんなルックスだけど、バカじゃないですからね。多分信用できる人物ですよ」を取材先にアピールしなくてはいけない。その時に利用したのが「学校名」と「所属した会社名」なのです。実際、この言葉を聞いた瞬間に彼らが安心している様は感じることができました。
 
ですから、学歴と社名については「より世間様が評価するもの」を獲得する方が人生ラクになります。獲得できなかった場合は、とにかく実績を作ってください。
 
そして、「広告代理店だとモテるか?」ですが、これについては、私は全面的に「モテない」と言いたいです。理由は、私自身モテなかったからです。正直、博報堂を辞め、無職になった時が一番モテたのです。理由は、あまりにもヒマだったものだから、女性が「誰かと喋りたいなぁ……。誰か暇そうな人いないかな……。あぁ、中川クン、無職だからヒマそう!」ということで、すぐに電話をくれる例が続出したからですね。
 
もしかしたら「結婚相手」としては広告代理店社員はモテるかもしれませんが、あくまでも日々の楽しみのモテを考慮すると、それほどモテないかもしれませんね。モテと結婚は別です。そこは分けて考えてください。
 
 

【筆者プロフィール】

中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)

①
 
編集者
 
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
 
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。

CATEGORYカテゴリー