• 2016.07.1211:30
  • 企業/業界研究

自動車業界の動向を分析。自動車業界の業界研究

自動車販売台数で世界一のトヨタ自動車をはじめ、ホンダやスズキも世界のトップ10に入り、自動車産業は日本が世界に誇る産業です。就職活動生に人気が高いのも当然の業界。しかし、世界や日本の状況は自動車業界にも影響を与えています。今後の業界の動向をつかむことは、就職活動には必須! 自動車業界の業界研究をしてみましょう。
 
 

 自動車業界の動向

2015年にフォルクスワーゲンが燃費偽装を行っていたと大問題になりましたが、対岸の火事ではなく、日本でも三菱自動車工業が全面的に燃費偽装を認め、企業の存在を揺るがす事態になりました。この偽装問題は、OEMの供給先だった日産自動車の指摘によって明らかになりました。日産自動車のブランド車の一部は、三菱自動車の工場で作られていたというのも、多くの人には意外だったのではないでしょうか。燃費がウリの軽自動車で、燃費のデータを意図的に操作していたというのは、メーカーに対する信頼を失墜させましたが、その後の調査で、ほぼ全車種で1990年代から国の規定とは違うやり方で燃費を測定していたことが判明し、完全に三菱自動車の信用は地に落ちてしまいました。この結果、日産自動車が34%の株式を取得し、筆頭株主として全面支援を行うことになりました。

 
一方で、スズキ自動車も、国の規定とは異なる方法で燃費を測定していたことを発表しましたが、国の規定通りに再測定した燃費値がカタログの記載値よりも高く、偽装する意図はなかったことが明白になり、逆に株を挙げています。日本の基幹産業である自動車メーカーには、スズキ自動車のような矜持を持っていてほしいと思う方も多いでしょう。三菱が行ってきた「リコール隠し」のような隠ぺい体質ではなく、高いコンプライアンス意識が自動車メーカーにもまず求められています。

 
日本の自動車産業にとって重要なファクターの一つが為替相場です。販売台数でトヨタが世界一になっているように、日本の自動車は国内市場だけでなく海外市場でのシェアが大きいために、為替の影響が大きいのです。1円上昇すると、トヨタで300億円以上、ホンダで170億円以上も損失が出ると言われていました。そこで各社は、為替の影響を減らすために、世界各地に工場をつくり、世界市場への提供を現地で行う体制をとっています。

 
国内市場に関していうと、若者の自動車離れ、人口減少と高齢化といった観点から、国内市場は拡大はしないとみられています。とはいえ、セグメントによっては拡大が見られるものもあります。高級化が進むバスは、2016年度は120%成長が見込まれています。消費税率の引き上げ時期も、高額商品なだけに影響があるファクターです。

 
今後の自動車業界の発展を担うキーワードは、「次世代車」です。エネルギー問題・環境問題を背景に、新たな技術の開発が進んでいます。トヨタは、プリウスに象徴される、世界に誇るハイブリッド技術を持っています。ホンダはFCV(新型燃料電池自動車)開発で世界をリードしています。日産自動車は、電気自動車の開発でリードしています。水素や電気を燃料とする車の開発は、同時に燃料ステーションの充実を必要とします。そういったインフラに当たる設備の充実や法整備も実用化に向けて必要になってきます。また、次世代に向けて「自動運転」車の開発も進んでいます。

 

 自動車業界の企業と業界再編の動向

次世代車の開発は、今後の自動車業界の維持発展のために不可欠ですが、多くの費用を必要とする現実があります。日本には、10社の完成自動車メーカーがありますが、すべての企業が経営資源を潤沢に持っているわけではありません。最も多くの手持ち資金を持つ世界一の企業であるトヨタですら、経営資源を有効利用するために、事業を集約しM&Aを行っています。2016年1月にダイハツ工業を完全子会社化した際に、豊田社長は、「自前主義にこだわっていると競争に勝てないため、小型車をダイハツに任せることにした」と仰いました。ダイハツ工業の三井社長も「自動運転などの次世代技術は待ったなしの状態。自らの事業規模を超えるリソーセスが必要となるのは明らかだった」と、記者会見で仰っています。どちらにとっても、発展的な子会社化であったと言えるでしょう。トヨタは、マツダとも2015年に、経営資源の活用や商品・技術の補完などを目指した業務提携に向けて基本合意をしています。また、少し古くなりますが、トヨタは、トラック製造に強い日野自動車を2001年に子会社化しています。2005年には富士重工業に、2006年にはいすゞ自動車に出資をし、資本提携を行っています。また、マツダとは、2015年に環境、安全技術分野を軸に包括提携を結んでいます。トヨタの燃料電池車技術とマツダの高出力・低燃費技術を相互提供する予定です。

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