• 2016.07.1111:30
  • 企業/業界研究

入社前のミスマッチを無くすために! 食品業界の業界研究

就活生に人気の企業ランキングが様々な媒体で発表されていますが、調査によって順位に違いはあるものの、必ず10社近くが上位50社にランキングインする食品業界。就活生に人気の業界です。そんな食品業界、外から見ているイメージと、業界の本質はマッチしているでしょうか。就職してからのミスマッチをなくすためにも、業界研究をしっかりする必要があります。食品業界はどんな業界でしょうか。見てみましょう。

 

 食品業界は不況に強い業界

人が生きていく上で最低限必要なのは衣食住といいますが、食はどんな状況でも生きていくのに不可欠なものだからです。不況になると、外食を削って内食に向かう傾向があるといった変化があるとはいえ、食べなくては生きていけない以上、食品業界は安定しているというものです。そういった安定性、身近さもあってか、就活業界でも非常に人気が高く、高倍率な企業が多いのも食品業界の特徴です。一方で、食品業界も外的要因の影響を受け、業界再編の動きが活発になっている業界でもあります。今後の動向をつかむことは、就活においても重要です。自分の志望するメーカーが、どういった取り組みを行っているのか、確認しておきましょう。

 

 人口構造の変化とそれに伴う消費動態の変化

日本は2010年以来、人口が減少しています。統計局によると、今後5年経つごとに約300万人ずつ人口が減っていくと予測されています。これは、食品業界に関わらず大きな問題です。国として見た時に消費者がどんどん減っていくということだからです。一方で、海外では人口増加や所得増加が見られる国が多く、食品市場は拡大しています。国内市場がメインの食品業界ですが、今後国内市場が縮小していく中、海外展開を強化していく傾向が見られます。食品産業の海外進出は、「海外居住日本人市場」、海外の安価な原料や労働力を利用する開発輸入型の「円高・自由化対応」、海外での日本食嗜好をうけて「海外市場の開発」という3本柱で行われています。例えば「キッコーマン」のお醤油は、世界中で売られており、海外居住の日本人にとってもありがたい存在になっています。海外市場の開発は、農林水産省と産業界が一体となって進めており、日本食の世界遺産化といった動きを受けて、従来それほど日本食が食べられていなかった国々にも広まりつつあります。

 

 人口構造の変化

人口構造を見てみると、65歳以上の人口が増え続けており、人口比で見ると向こう30年間は、その比率が上がっていくとみられています。東京オリンピックが開かれる2020年には、総人口の36%が65歳以上の人口になると言われています。年齢層によって、食品に求める付加価値は変わってきます。赤ちゃんには離乳食が必要ですし、育ち盛りの子供たちには栄養価とカロリーが高い食品が必要になります。高齢者は一般的に単価が高めでも高付加価値の商品や小容量の商品を求める傾向があります。内閣府の発表によると、生涯未婚率も高くなっており、男性で2割近く、女性で1割ほどになっています。高齢者世帯も含めて、単身者世帯数も増えています。単身世帯も、食品購買という観点から見ると、食品支出の割合が高くなる傾向があります。こうした、人口動態の変化を受けて、高齢者や単身者を対象とした食品市場の形成、新たな商材の開発、販売形態の変化といった対応が求められています。

 

 小売業態とのかかわりの変化

食品メーカーと小売りの間には、以前は仲卸があり、食品専門商社が機能していました。しかし、小売業界も人口減少に伴う国内市場の縮小の影響を大きく受けて、中小小売店の廃業や業界再編が進み、大手の寡占化が進んでいます。スーパーやコンビニも含めて、ナショナルチェーンやディスカウンターによる価格競争が進むと、メーカーも定価販売を続けるわけにはいかなくなっていきます。

 
また小売業界の大手企業の多くが、PB商品の開発を行っています。PB食品は基本的に、食品業界のいずれかの企業が契約し作っているわけで、契約をとったメーカーにとっては、新たな市場が開ける形になります。一方で、多くのナショナルブランドにとっては、競合商品となっています。差別化のできるブランドをつくることができるかが、生き残りの要因となっていきます。

 

 食品業界の取り組み

食品業界も、外部要因の変化に伴って、新たな取組みをしています。

 
・グローバル化
大手メーカーは、海外市場を見据え、グローバル化を行っています。ただ、食品工場設備への投資といった大型案件は、ある程度体力のある企業でなくては厳しい状況にあります。2014年には、味の素が米国の冷凍食品事業会社「ウインザー・クオリティHD」 を買収、お酢の大手ミツカンは、米国の「コノプコ」からパスタソースブランドを買収しました。2013年には、サントリーが、英国の「グラクソ・スミスクライン」の清涼飲料事業を買収し欧州での事業基盤の強化を行っています。同様にマルハニチロ水産も、オランダのシーフードコネクションホールディングを買収し、欧州での販売強化を進めています。キリンホールディングスや味の素といった大手メーカーは、現地ブランドを重視した経営にシフトを移しており、世界中でM&Aを行い、世界展開を行っています。そういった企業では、今後、国内市場だけでなくグローバル市場で働ける人が求められるようになります。

 
・新たなニーズへの対応
地方特性にあった商品開発へと、小売り大手が変化している中、そういった細かい対応ができるか、というのも食品メーカーの課題となっています。大手食品メーカーは、地方の地場食品メーカーと手を組み、新たな動きに対応していく傾向が見られます。2014年には、コーヒー豆加工販売の大手キーコーヒーが、愛知県のhonu加藤珈琲店を子会社化、即席めん大手の日清食品ホールディングスは、在阪の製菓メーカーぼんちと業務提携を行っています。

 
健康志向や高齢者ニーズへの対応を見据えた、新機能商材の開発も盛んに行われています。トクホの概念が明確化され、国からの許可を受けることができるようになって以来、多くのトクホ商品が流通するようになっています。サントリーの黒ウーロン茶のように大手メーカーも参入していますが、ニッチな商品をつくるメーカーにとっても、チャンスとなっています。高機能商材の開発にはコストもかかることから、M&Aも盛んになっています。乳酸菌飲料トップのカルピスは、味の素からアサヒグループホールディングスに買収されています。

 
・食品安全性の問題
食品表示の偽装が、企業の信頼を失墜し破たんに結びつくということが2010年代に入ってからも続きました。食品産業は、直接健康と関わってくるために、食品リスクはそのまま経営リスクに直結します。また、食品添加物問題に関しては、国の法規制の対象外のものも依然多く、規制に関してどうしていくかというのも問題となっています。

 
日本の中食を支える冷凍食品は、加工食品の中でも成長産業ですが、食材を調達している海外で加工を済ませ商品として日本に輸入する形態が主流になりつつあります。

 
・食品の安定供給に向けた取り組み
日本は自然災害も多い国ですが、災害が起こると、日常生活に必要な商品が滞ってしまうという事態が過去に何度もありました。こういった事態を受けて、食品メーカーも商材を一つの工場に集中して作る体制を見直すようになっています。

 
食材の原料の多くを海外からの輸入に頼っているため、原料調達に関しても、大手メーカーは、一国ではなく複数の国から供給する体制を確立しています。

 
 

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