• 2015.09.2104:00
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【中川淳一郎コラムvol.3】結局、就活ではウソをついた方がいいのか? 盛った方がいいのか

(※このコラムは、2015年5月27日に2016年卒学生対象メディアの就活NEWSにて公開されたものです。)
 
就活関連のイベントというか、「公開悩み相談」みたいな場所で質問を必ず受けるのが「面接では自己を偽った方がいいのか?」ということです。この質問は必ず出てくるので、少なからず就活生にとっては悩むテーマの一つといえそうです。基本的に学生の間で流布される情報にはあやふやなものが多いのですが、「ウソをついたら通った」みたいなこともよく言われます。「ウソ」というのは、「本当はサークルで役職がないのに『副部長』と言った」とか、「東日本大震災でボランティア活動をしてきた」みたいな話のように、自分のことを良く見せようとする類のものです。
 
実際嘘をついた方がいいのかどうかということについて、本当のところは分かりません。天才的かつホレボレするような嘘で、面接官を感動させてしまうのであれば、それはアリといえばアリなのですが、私はウソをつくことはあまりオススメしません。
 
そもそも、大抵の嘘は自分を実態よりも立派な人or聖人君子に見せようとするものです。ここで一旦考えたいのですが、そんな人物像を出すことって面接突破に繋がるのでしょうか――。
 
この単純な答えに対して答えられる人はいない。ただ、一ついえるのは学生の間には、面接というものを「自分はいい人だと振る舞うコンテスト」と捉える風潮が存在するということです。しかし、実際に仕事をしている人ってのはごくごく普通の人であり、犯罪行為や反社会的行為をせず、コンプライアンスを順守してマジメに仕事をしてくれればそれでいいのですね。営業に行く時、電車に乗ったら「今日も定時に動いてくれてありがとう」なんて思う必要もないし、客先で「あなたが産まれてきてくれたお陰で、今日はこうして商談をすることができます」と思う必要もない。「あっ、電車来た来た。間に合いそうだ、良かった良かった」や「この課長、けっこう頭キレそうだな、なかなか手ごわいぞ。なんとかハンコ押してくれ」ぐらいのことを考えればいいんですよ。
 
というわけですので、面接でウソをつくという行為は将来に繋がる行動ではないです。何よりも問題は、面接で一瞬の予想外の質問に究極的に弱いってことなんですよね。よくテレビで詐欺師が出てくるじゃないですか。記者がビシビシと鋭い質問で斬り込んで来たらもうしどろもどろに。あれと一緒なんですよ。面接って、本当は「ノーガード戦略」でいくべきですよ。ウソをついてしまうと、類稀なるクリエイティビティを発揮して回答をしなくてはいけないし、そのウソを説明するためにさらにウソをつかなくてはいけなくなる。しかも、そこには矛盾があってもいけないので、一瞬で様々なことを判断しなくてはならず、途端に面接の難易度が高くなっていくんですよね。
 
以前、私が博報堂でリクルーターをやっていた時に、「ノーガード戦略」の学生がいました。というか、通した学生のほとんどは「ノーガード戦略」で、言われたことに対して深読みすることもなくただ、答えた方々でした。彼女と私のやり取りを再現しましょうか。結局彼女は博報堂の内定を取りました。本当に感じの良い面接でした。彼女の嘘をつかない「ノーガード戦略」は、今でも思い出せるほどホレボレします。彼女の名前は吉田としておきましょうか。
 
 
 
中川:今日はお越しいただきましてありがとうございます。
吉田:はい! こちらこそお時間いただきありがとうございます。
中川:なんで当社を受けたのですか?
吉田:正直、まだよく分からず、『いい会社』というくらいの評判しか聞いていないのですが、そんな気持ちで受けてもいいのでしょうか?
中川:別に構いませんよ。全部知ってる方がおかしいワケですし、それにこれからたくさん会社受けるワケでしょ? 別に博報堂の内定を取れることが保証されている状態でもないのに、何でも知ってるぐらい研究をするのはリスクが高いと思います。
吉田:あぁ、なんか周りの人って「広告オタク」みたいな人もいて、正直私は差をつけられたような気がしてまして……。だからこうして慌ててOB訪問のお願いをしてしまいまして。
 ※これはOB訪問とはいえ、採用活動
中川:いえいえ、別に広告業界に関する知識量を聞いているわけではありません。ところで、学生時代、何をよくやってたんですか? 楽しかったことってなんですか?
吉田:私、自分でサイトやってて、バカなネタばかり書いていたら案外アクセスがありまして……。
中川:どんなの?
吉田:こんな感じです(と印刷したものを見せられる)。ほぼネタだらけなんですが……。
中川:(一本エントリーを見たところで)あぁ、面白いじゃない。これを毎日やってたんですか?
吉田:できる時はけっこう…。
中川:あとは?
吉田:私、阪神が好きなんですよ。別に関西に縁があるというワケでもないのですが、新庄って超カッコイイじゃないですか! 
中川:おぉ! 新庄、オレも好き! 去年さぁ、新庄が敬遠のクソ球を打ったらサヨナラになった試合、甲子園でオレも見ていたんだよね。
吉田:おぉ! 私もいました! えぇ~、中川さんとあそこで同じ空気吸ってたんですね!
中川:いやぁ、あれはいい試合だったよね。でも、阪神って弱いじゃん。なんでそんなに好きなの?
吉田:あのぉ(と少し恐縮する)、私がなぜ阪神が好きなのかをちょっと長くなるけど話してもいいでしょうか……。
中川:いいですよ
 
 

ということで、吉田さんはここからなぜ阪神が好きなのかを長々と話し始めました。そして、学生時代に力を入れたことは麻雀だとも言いました。別に、広告業界の社員には「ウェブサイトを作る技術」と「阪神ファンであること」は必要ではありませんし、麻雀ができる必要もありません。
 
あくまでも彼女が好きなこと、頑張ったことを聞いたらこんな答えが返ってきて、私とポンポンと会話が成立し、私は彼女にABCDの4段階で「B」をつけ、高評価を与えたのでした。「ウソをつく」だと、「毎日アクセスが3万PVでアフィリエイト収入が月に30万円あります」「美術館めぐりが好きです」「麻雀プロとして稼いでいます」みたいなことになりますが、「プロの大会の雰囲気ってどんな感じ?」「ギャラってどれくらいなんですか?」なんて聞かれたらもう答えられませんよね。
 
これでおわかりかもしれませんが、別に面接ってその人がどれだけ立派なことをやったかを知りたいワケでもなければ、より大きなエピソードを知りたいワケでもないんです。その人がどんな人かを知りたいだけです。その理由は面接の時間を割いてまで会ってるだけに、企業だって「いい人と巡り合いたい」と考えているのですね。そんな、本気でいい人を見つけたい主体に対してあなたがウソをついてどうするのだ? ということです。合コンとかお見合いで「僕は、バイト先でお客様の笑顔を見るのが好きなんですよね」なんて言うワケないでしょ? 要するに合コンやお見合いで言わないような自己アピールは意味ないってことなんですよ。
 
というわけですので、私の結論としては「ウソをつくと、色々と後が大変になるし、頭を使わなくてはいけないのでウソはつかない方がいい」となります。実体験を正直に話すと何の頭も使わないでいいんです。これはラクです。それで落ちたのであれば合わなかったということなので、仕方ないですね。別の会社を受ければいいんです。
 
 
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【筆者プロフィール】

①
 
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
 
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行い、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
 
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)や『内定童貞』(星海社)など。

 
 

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