• 2015.09.1404:00
  • 就活入門

【就活コラムvol.2】就活は、落ちることから始まる

(※このコラムは、2015年1月31日に2016年卒学生対象メディアの就活NEWSにて公開されたものです。)
 
 

 なぜ、食品メーカーに落ちる学生は世界中の人を笑顔にしたいのか

 
「幼い頃から、食に関心がありました。食を通じて、世界中の人を笑顔にしたいです。」
 
 
毎年、よく見かける食品メーカー志望者のエントリーシートである。どういうわけか毎年、同じ人物が書いているのではないかというくらい、よく見かける。人事担当者はこのようなエントリーシートを書く人を「笑顔ちゃん」と呼ぶ。
 
冷静になって読んでみると、大学生の書いたものとは思えない幼稚なものである。ただ、日本トップクラスの有名大学の学生でも、こんなことを書いてしまう。当然だが、これでは内定は厳しい。このエントリーシートは、あらゆる意味で「弱い」。
 
なぜ、このエントリーシートは「弱い」のか?
 
第一に、このエントリーシートはお客様視点、お子様視点である。だから弱い。あなたは、従業員として企業に雇われる立場なのだ。企業とは永続的に価値を創造し、利益を追求する場である。それは並大抵のことではない。なぜ、それを安易に「世界の人を笑顔に」と根拠もなく言い切ってしまうのか。
 
厳しい言い方をすると、この志望動機は幼稚園、小学生の夢とあまりレベルは変わらない。要するに、食が好きで、だから仕事をしたいという当たり前のことを言っているだけである。食品メーカーを受ける者にとって、そんなことは大前提であり、何も言っていないのと一緒である。笑顔の前に、まずは売らなくてはならない。売るためには、価値のある商品作りと、地道な営業が必要だ。価値、売上と両立した笑顔でなければならないのだ。
 
そもそも論で言うと、志望業界を食品メーカーにするという行為自体、甘い。最も身近な商品で、好きな商品に関する仕事をしたいというミーハーなものにしか聞こえない。食品メーカーが面白そうな仕事に見えることやそこを志望する人を否定しないが、いかにも身近な商品を作っている業界・企業を選ぶという行為自体が、就活をよくわかっていない学生がやる行為である。
 
というわけで、こういうエントリーシート、志望動機は残念だなと思うのである。残念なことに、当然、落ちる。
 
 

  落ちることは、悪いことなのか?

 
「落ちる」という言葉を聞いてドキッとした人も多いことだろう。ここで、確認しておきたい。「落ちる」という行為を体験すること、これも実は大事なことなのだ。就活は「落ちる」ことから始まるのである。
 
まず、就活で落ちることは珍しいことでも何でもない。大学入試の倍率は最近では人気校でも10倍を切るくらいである。地方公務員の各自治体での採用試験は5倍〜10倍くらいである。就活においては、人気企業の倍率は250倍くらいになる。今までで未体験の倍率と言っていいだろう。もっとも、倍率だけでは決まらないのが就活だ。応募者が少ない中堅・中小企業でも、採用基準をクリアしていなければ採用には至らない。脅すわけではないが、これが現実である。
 
しかし、ここで怯えるわけにもいかない。落ちることを恐れてはいかない。もし落ちた場合は、「なぜ落ちたのか?」これを丁寧に振り返ること。そして、次に活かすこと。これこそ、こだわるべきことである。
 
もし、エントリーシートで落ちてしまったのなら、そのコピーを社会人や、大学教職員、友人などに見てもらって、どこが甘かったのかを振り返るべきである。
 
就活に学歴差別・区別は、昔も今も存在する。ただ、実に巧妙に行われていて、見えないものになっていることも多い。特に2016年度新卒では、就活時期が繰り下げになっているが、早期から囲い込まれる有名大学の学生と、就活は春からゆっくり始まり夏に選考が行われると信じきっている学生に分化する可能性が高い。インターンシップやエントリーシート提出などが今後、盛んになるが、そこで「落ちる」という体験を通じて、「なぜなのか?」ということをひたすら考え、対策して欲しい。
 
これを繰り返す過程で、夏に本番が始まると信じている学生とは大きく差がついているはずだ。
 
 

 逆求人型就活で「落ちる」を疑似体験する

 
「就活は落ちる」「甘くない」ということを伝えた。そのことを学ぶ最適の場が実は逆求人型の就活サイトである。
 
逆求人型のサイトは、企業が登録している学生のプロフィールや、アピール内容をみて、オファーを出すという仕組みになっている。自分が考えてもいない業界・企業からのオファーがある。意外性のある出会いが、進路の可能性を広げるのである。
 
こう書くと、学生にとっては「内定が降ってくる」かのように聞こえるかもしれない。ただ、実は決して甘いものではない。自分で工夫してアピールしなければ、そもそもオファーが来ないのである。ここもまた、就活同様の競争なのだ。
 
さらに、オファーがきたとしても、採用されるとは限らない。企業が「採りたい」と思うかどうか。そのためには、「自分はその企業のことをどう見ているのか」「自分とはどんな人間か」ということを語れるかどうか。ここを外してはいけない。
 
どうやったらオファーがくるのか?何度もプロフィールやアピールポイントを更新し、模索する。逆求人型とはいえ、自分を売り込まなければならないのである。オファーがくるかどうかの模索。これも、ある意味「落ちる」の疑似体験であるとも言える。
 
このように、早めに「なぜ落ちるのか」「なぜオファーが来ないのか」に慣れておくと、就活のスタートダッシュは変わってくる。強い自己アピールとは何か。考えてみよう。
 

 

【筆者プロフィール】

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常見陽平(つねみようへい)
評論家・コラムニスト
 
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。2015年4月 千葉商科大学に新設される国際教養学部の専任講師に就任予定。
 
著書に『「就社」志向の研究』(KADOKAWA)『就活の神さま』(WAVE出版)『リクルートという幻想』(中央公論新社)など。

 
 

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