• 2017.12.1908:00
  • 自己分析

【中川淳一郎コラムvol.36】悩み相談)「自分らしさ」「自分の言葉」ってなんですか…?

Q)自分らしさってなんですか…? よく「自分らしさを出して」とか、「自分の言葉で」っていうけど、「自分」って何のことなのか、もうわからなくなってきました……。どうやって見つけたらいいのでしょうか。
 
A) わからなくなったのならば、それでいいです。「自分らしさ」というものは、スポーツ選手や芸能人やミュージシャンなど、選ばれし者がその卓越したパフォーマンスにおいて使う言葉であり、一般人が使っても痛いだけです。
 
ですから、「自分らしさを出せよ」と言う人のことは「バカ」とは言わぬまでも「あまり信用できる人ではない」と思ってもいいでしょう。本当に面接で「自分らしさ」を出すのであるとすれば、私なんてこんな面接になってしまいますよ。
 
面接官:当社を志望した理由はなんですか?
 
私:いや、仕事欲しいだけっす。しかも、給料がそれなりにいいじゃないですか。
 
面接官:(ムッとする)えぇ~、それだけであればウチを選んだ特有の理由にはならないと思いますが…。
 
私:いや、普通、就活なんてそう考えてやりますよね。人生不安だから就職し、より良い人生を送りたいから給料高いところに行きたい。それを正直に述べたまでです。
 
面接官:はぁ……、そうですか。ところで学生時代に力を入れたことは何ですか?
 
私:基本的にはあんまり何もしていないです。暇だったので、窓際の陽だまりの中でスネ毛の枝毛を割いて時間をつぶしていました。それはさておき、私はこの時間になると普段はビールを飲んでおりますので、コーヒーでなくビールに変えていただけませんか? 御社はビールメーカーですから、冷えたビールぐらい、ありますよね?
 
どう考えてもこんな面接をしたら落ちます。しかし、私にとってはこれが「自分らしさを出す」なワケです。「あんまり人付き合いは良くない」「暇潰しは上手」「ビールが好き」という私らしさを全開に出したらコレですよ。
 
よって、あなたが「わからなくなる」のは当然の話です。この言葉はスルーしてOKです。だったらどう面接に臨めばよいかといえば、「嘘をつくな」です。これは「自分の言葉で語れ」に通じる言葉です。「自分の言葉で語れ」については私も重要だと思いますが、もっと適切な表現としては、「腹から出た言葉か?」になるでしょう。
 
「腹から出す」を教えてくれた大学の先生
 
私が学生の時、楠木健先生という方の講義をとっていました。現在はマーケティングや組織論等の大権威になっている楠木先生ですが、当時はまだ32歳で「若手の面白い先生」といった感じでした。年齢が近いのに多種多様な知識を有し、さらに講義も面白く一緒にクリスマス会などをやってくれたこともあり、私は楠木先生のことを慕っていました。
 
その楠木先生の言葉で今でも覚えているのが「それは腹から出た言葉か?」というものです。何らかのプレゼンを誰かがしたのですが、どのプレゼンが一番良かったか、という話になると「腹から出た言葉でプレゼンをする人が一番良い」ということを言います。
 
つまり、本心から語っているか? というのが重要なところなんですよ。私はかつて広告代理店で働いていましたが、OB訪問を受けた際、学生が「腹から喋ってない」ことを見抜けるんですよね。なぜ広告業界を志望したのか? を聞くと、多くの場合はこんな答えが返ってくる。
 
「せっかくの良い商品であっても、『知らない』ことによって売れなくなります。広告は商品やサービスのもっとも良いところを表現に落とし込み、それを消費者に伝える行為だと思います。本当にいいものを必要な人に届けたい。そんな気持ちを抱くに至り、今回御社を受けさせていただきました」
 
これは「腹から出た言葉」ではありません。なぜそれが分かるかといえば、就活というものは栄えある将来を獲得するための第一歩だからです。あくまでも「自分本位」な活動をしているというのに、この回答では「企業・消費者両方のためになりたい」ということしか言っていない。
 
学生というものは、面接では「腹から出た言葉」を隠す傾向にあります。聖人君子を装い、「喉から出た言葉」でさえなく「口の中から出た薄っぺらい言葉」を言うにとどまります。しかし、面接というものは面接官が学生の本心を知りたい場所。私の冒頭の模擬面接の言葉はやり過ぎではありますが、もう少し聖人君子的ではなく、“自分本位”な態度を見せても良いのではないでしょうか。
 
 

【筆者プロフィール】

中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
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編集者
 
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
 
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社新書)、『夢、死ね! 若者を殺す「自己実現」という嘘』 (星海社新書)など。