• 2018.09.0311:30
  • 企業/業界研究

【事例あり】医薬品メーカーを受けるにあたっての志望動機

2015年、カバのマークで有名なうがい薬の「イソジン」ブランドを明治ホールディングス傘下のMeiji Seikaファルマが手放すニュースが話題となりました。元々イソジンはアメリカの製薬会社ムンディファーマが商標を保持し、明治が日本国内の開発・製造から販売・普及を行うという関係性でしたが、昨年末解消させたというわけです。
カバのキャラクター「カバくん」はそのまま明治が権利を持ち使用できることになりましたが、権利解消の要因はムンディファーマの日本国内の展開強化。日本の企業に任せるのではなく自社の力で展開していこうと方針になったのです。当然、ムンディファーマと明治は今後、競合企業となります。
 
このように医薬品業界も国内にとどまらず海外の企業を視野に入れる必要がありますが、
どのように志望動機を考えていけばよいのでしょうか。
(※こちらの記事は、2016年5月24日に公開したものを更新しています。)
 

 製薬業界の構造

製薬業界は、国内市場であっても、国内メーカーだけのものではなく、海外メーカーとの提携や競合が不可欠な業界です。医薬品は製品の輸出入だけではなく、ライセンスのやり取りが、技術導入や技術提携といった形での知財の動向もポイントとなっています。

 
海外メーカーは、世界的規模での業界再編が進んでいます。2014年には、世界第2位のシェアを持つファイザーが、Allerganの合併を発表、これにより、6兆円の売り上げを持つ企業が誕生。日本のトップメーカー、武田薬品も2008年にアメリカのミレニアム・ファーマを買収したのを皮切りに、米国やスイスの21社を買収し、グローバル化への動きを先鋭化させています。

 
日本の医薬品市場規模は、およそ10兆円。アメリカ・中国についで世界第3位の市場規模を持っています。国内市場は、医療費を抑制するために実施されている政策の影響を大きく受けています。

 
1. ジェネリック医薬品の利用率アップ政策
ジェネリック医薬品は、新薬の独占販売期間が終了した新薬開発メーカー以外のメーカーも製造・販売できるようになった医薬品です。有効成分などは新薬とほぼ同じですが、開発コストが抑えられるため、販売価格は2~7割と安くなります。医療費を抑えるために、2016年で69.9%ほどのジェネリック医薬品のシェアを2020年までに80%まで上げていくというもの。この政策を受けて、ジェネリック医薬品市場に、新薬開発メーカーも参入し始めています。

 
2. 薬価制度改革
薬価制度とは、厚生労働省が保険医療に使用できる医薬品に公定価格(薬価基準)を定める制度です。
日本では、全ての人に公平に治療を施すために医薬品ごとに一定の公定価格が決まっており、【売上の高い医薬品=年間の患者数】という考えから、患者の負担を軽減し利用しやすい費用感に値下げをするなどの調整が入ります。
この薬価制度が2018年より「抜本改定」されました。
これにより、これまでよりも価格が下がる医薬品が多くなることで、企業にとっては新薬開発に充てる予算が減少してしまうリスクもあるため、特に中堅企業や新薬メーカーは大きな影響を受けそうです。
また、これまで2年ごとに薬品価格の見直しを行っていたものを今後は毎年改定することも発表されており、医薬品メーカーを志望する方は、業界の変化にアンテナを張っておく必要があります。

 
国内状況が厳しくなっている中、国内大手メーカー各社は海外での販売事業に力を入れています。ただ、世界各国でそれぞれ、保険制度、医薬品規制、許認可制度などは異なっており、各国の状況にそれぞれ対応する必要があるのが、国際展開の際に気を付けなくてはならないポイントとなっています。

 

 製薬メーカーのトピックス

2017年は医薬品メーカーにとって変化の多い1年となりました。
注目すべきは【海外企業の買収】【デジタルメディスンの登場】の2点です。
 
■海外企業の買収
武田薬品工業は2月に54億ドル(当時のレートで約6102億円)の巨費を投じて米アリアドを買収。獲得した肺がん治療薬のALK阻害薬ブリガチニブは、ピーク時に世界で年間10億ドルを超える売り上げを見込んでいます。
 
アステラス製薬は、2017年にはベルギーの創薬ベンチャー、オゲダを買収。更に2018年8月にはイギリスのスタートアップ企業キューセラを買収しました。
2018年以降3年間はM&A(合併・買収)を軸にした事業投資に2000億円程度を充てることを発表しており、創薬ベンチャー企業を買収するなどして、有望な新薬候補の獲得につなげる動きを見せています。
 
田辺三菱製薬は、8月に萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬を発売し米国市場への進出を達成。
10月には、製品ラインアップの強化を狙って、パーキンソン病治療薬を開発するイスラエルのニューロダームを買収しました。
2020年度までに米国売上高800億円の目標に向け事業展開を加速させています。
 
後発品業界では、沢井製薬がアメリカのジェネリック医薬品企業アップシャー・スミス・ラボラトリーズを買収しました。
 
■デジタルメディスン
大塚製薬が、錠剤に埋め込んだセンサーで服薬状況を管理する「デジタルメディスン」の承認を米国で取得し、話題となりました。
アメリカのプロテウス・デジタル・ヘルス社と共同開発した「エビリファイ・マイサイト」は、医薬品と医療機器を一体化して開発された世界初の商品です。
極小センサーを組み込んだ錠剤を服用し、情報をアプリで管理をすることができるようになることで、薬の飲み忘れ防止や病状の管理がしやすいメリットがあります。
 
今後はこういったIT技術を活用した服薬支援の取り組みが更に注目されきます。
医薬品メーカー志望の方は、ぜひこういったニュースにも目を向けるようにしましょう。
 

 製薬メーカーの種類と企業

製薬メーカーには、新薬の開発・製造、販売を行う新薬メーカーと、ジェネリック薬品を製造するジェネリック薬品メーカーがあります。また、他業種からの参入も盛んになっています。一例を挙げると、富士フイルムは、医薬品の開発・製造に参入しており、血液癌の抗がん剤を開発中です。

 
日本の製薬メーカーにはどんな企業があるでしょうか。()の中の売上高は2017年3月期売上

 
・武田薬品工業(1兆7,705億円)
日本のトップ企業、医薬品の研究・開発・販売・輸出入を行っています。世界各国に現地法人を作り、グローバルに展開している企業です。京都大学のiPS細胞研究所と共同研究契約を締結し細胞治療に向けた研究プロジェクトを立ち上げるなど、開発にも積極的な企業です。

 
・アステラス製薬(1兆3,116億円)
国内2位の売り上げ高を誇る研究開発型グローバル企業。国内のトップクラスの研究機関と提携、新薬の開発を行っています。

 
・第一三共(9,602億円)
ルルやロキソニンといった一般医薬品、ジェネリック医薬品、ワクチン事業など多方面に展開している企業です。国内外にグループ会社を持つグローバル企業です。

 
・日医工(1,633億円)
成長著しい、ジェネリック薬品の製造・販売メーカーです。

 
・沢井製薬(1,680億円)
ジェネリック薬品を主に製造・販売しているメーカーです。

 

 製薬メーカーの志望動機

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