• 2017.08.2311:30
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【石渡嶺司コラムvol.17】 エントリーシート改造講座 「イベント主催経験をアピールする学生は就活に有利?」

エントリーシート改造講座6回目の今回は「イベント主催経験をアピールする学生」についてです。
ちょっと変わったイベントやセミナー、ファッションショーなどを主催する学生、というのはそれだけで目立ちます。
他の学生からも「エントリーシートで書けるネタがあっていいよね」と羨ましがられますし、本人もそれを否定しません。
書類選考どころか、面接も楽勝だろう、と思いきや、書類選考で苦戦。一体、何がまずかったか、と気に病んでしまいます。
では、書けるネタがあるのに、何が敗因だったのでしょうか。
 
 
今回の参加者
 
▽南井正彦さん(早稲田大学)
※名前は仮名です
 
南井さん:お願いします。あの、やはり、リーダーシップって、評価されるのでしょうか?それとも、学生だから生意気、と思われるのでしょうか?
石渡:うーん、どうだろう。評価する企業、そうでない企業、それぞれあると思うよ。
南井さん:どういう企業か業界なら、通りやすいですか?
石渡:それは一概に言えないなあ。同じネタでも感じ方は採用担当者次第。それに書き方によって伝わるかどうか、という問題もあるし。
南井さん:そうですか…。
石渡:リーダーシップについて聞いてくる、というのはそういうネタでまとめた、ということ?
南井さん:はい。僕は、環境問題についての学生フォーラムを主催、成功させました。
石渡:それは大したものだね。結構、大変だったでしょ?
南井さん:はい、色々あったのでネタには困りません。同級生からは「いいよね、書けるネタがあって」と羨ましがられていました。
石渡:過去形ってことは、うまく行かない?
南井さん:はい。書類選考で本命企業を含めて半分以上、落ちてしまいました。一体、何がまずかったか、添削してほしくて。
石渡:了解。それでは拝見しましょう。
南井さん:はい、こちらです。志望企業はメーカーの総合職、お題は「自己PR」です(制限文字数・400字)。
 
●南井さん・作成:

大学2年のとき、環境問題の学生フォーラムを主催した。環境ビジネスと学生生活の関連性をゼミで研究しており、その研究活動の一環として学生フォーラムを主催することになったのだ。一般学生にも環境問題を日常生活において意識してもらう学生フォーラムにすることを心掛けた。開催するにあたって、環境ビジネスを展開している企業数十社にアポイントを取り、企画書を持ち込んで参加をお願いした。フォーラムのパネルディスカッションについて構成をよくするために工夫し、アクセスの良い場所の確保、開催資金の確保もコアメンバーの6人で行い、フォーラムを1から企画した。その結果、フォーラム後に実施したアンケートでは80%以上の学生が「環境問題をさらに考えたい」と回答した。また、フォーラムに参加した企業の実店舗に「フォーラムで気になったからから来た」という顧客が数名来店した。このリーダーシップを貴社でも生かしたい。(392字)

 

●石渡解説
学生フォーラムの開催をした、ということは伝わってきます。
しかし、学生フォーラムそのものの話で7割程度、それから主催者としてやって当たり前の話が残り3割程度。南井さんならではの話はほぼありません。もうちょっとディテールがないと、どういう学生なのか、そもそもリーダーシップがあるのかないのか、などが判定できません。
例によって、色々と聞いていくことにしましょう。

 
南井さん:どうでしょうか…。
石渡:これでダメだった、という自覚はあるんでしょ?
南井さん:はい。ただ、これをどう変えていけばいいか、よくわからなくて。
石渡:もちろん、それも説明するけど、この学生フォーラムと南井君について聞かせて。最初、主催とあるけど、途中で「コアメンバー6人」とあるよね?結局、主催した学生は南井君1人、それとも6人?
南井さん:6人です。共同主催と言いますか、仕事を分担しました。
石渡:この学生フォーラムの運営にかかわった学生の数は?
南井さん:全部で30人くらいです。その中で僕を入れて6人がコアメンバーです。参加者は2日間で500人を超えました。
石渡:あー、この学生フォーラム、なんか、どこかの記事で読んだことあるなあ。これ、南井君のイベントなんだね。
南井さん:はい。ところで、こういう数って、適当に盛った方がいいでしょうか?
 

●石渡解説
数を盛ったところであまり意味がありません。
加えて言えば、目立つイベントやサークル、ゼミなどはマスメディアで記事や番組になったり、ネットで情報が露出しています。そこに出ている数字と大きなかい離があると、盛っていることが判明。大きなマイナス評価となってしまいます。

 
石渡:盛ること自体、意味がないし、すでに記事にもなっているじゃない。簡単に嘘がばれるよ。
南井さん:そうですか…。
石渡:それより、君がこのフォーラムで果たした役割をもうちょっと教えて。「環境ビジネスを展開する数十社」とあって、終盤に「参加企業の実店舗」とあるけど、これはどうつながるの?
南井さん:環境にやさしいファッションを扱うアパレル企業に参加してもらいました。その企業のショップが大学の近くにあり、来場学生が来店した、と聞いています。
石渡:なるほど、そういうつながりがあるんだ。来店者が増えたなら、そのアパレル企業も喜んだでしょ。
南井さん:はい。それに報告書も喜んでくれました。
石渡:ん?どういうこと?
南井さん:フォーラムは石渡さんが読んでくれた記事にもある通り、成功しました。そうしたメディアの反応や来場者の反応、フォーラムの反省点などを報告書にまとめました。スポンサーになってくれた企業やフォーラム参加企業には報告書を持っていき、挨拶に行きました。
石渡:そういうフォローをちゃんとやったんだ。
南井さん:はい、すると「学生のイベントでそこまでやってくれるのは初めて。次も開催するなら協力する」と言ってくれました。
 

●石渡解説
学生がイベントを主催、あるいは、フリーペーパーを発行するとき、様々な社会人や企業と関わることになります。開催・発行前はやたらと熱心なのに、それ以降は何のフォローもしない、という学生団体・サークルが結構あります。私も一度ならず、イラっとしたことがあるのですが、南井さんはそうではないようです。

 
南井さん:フォローは招聘することができてから、フォーラムの直前まで丁寧にすることを心がけていました。
石渡:どういうこと?
南井さん:パネルディスカッションにご参加いただく企業にはその企業の紹介冊子やサンプル製品の配布を提案。それを受け入れてもらいました。そこで、どんな冊子になるか、あるいは配布のタイミングなども含めて、できるだけ丁寧に連絡するようにしていました。
石渡:そこまでやる学生ってなかなかいない気がするなあ。
南井さん:なんか、資金提供を表明してくれたらあとは何の連絡もない、というのが嫌いで。少なくない金額を出してもらうのだし、学生のイベントと言っても、そこは学生、社会人、ある意味で対等だし、きちんと対応するのが筋だろうと思います。
石渡:なるほど、そういう話が一切ないのが、書類選考落ちの敗因だね。
南井さん:え、どういうことですか?
石渡:まず、君の話を聞いたうえでの改造例を読んでみて。
 
●石渡・改造例:

大学2年のとき、環境問題の学生フォーラムを運営することになった。環境ビジネスと学生生活の関連性をゼミで研究、その研究活動の一環として学生フォーラムをコアメンバー6人で運営することになったのだ。私は資金集めにおいて関心を示してくれた5社を担当。企業紹介冊子・サンプル配布などを提案し、無事5社ともフォーラムへ招聘することができた。もちろん、招聘しただけでは終わりではない。内容確認なども含め実施直前まで丁寧に説明するようにした。盛り上がって終了した後も、メディア記事やフォーラム来場者の反応、反省点などを報告書にまとめ、私が担当した企業5社に挨拶してまわった。すると、「学生のイベントでここまでフォローしてくれたのは初めて。次も開催するなら協力する」と言ってもらえた。ご縁があった人とは、できれば長いお付き合いをお願いしたい。そのためには丁寧にフォローすることを今後も大事にしたい、と考えている。(397字)

 
南井さん:全然、違う…。
石渡:君がまとめたのと、どっちがいい?
南井さん:断然、石渡さんがまとめた方です。でも、なんでこんなに違うのですか?リーダーシップというキーワードを使っていないからでしょうか。
石渡:うん、それもあるけど、君がまとめたものと改造例、決定的に違う点があるはず。何だと思う?
南井さん:えー、なんだろ?
石渡:南井君が最初に書いたものは、本当に南井君の話?きついことを言うと、南井君じゃなくても書けるんじゃないかな。たとえば、
「フォーラムのパネルディスカッションについて構成をよくするために工夫し、アクセスの良い場所の確保、開催資金の確保」とあるけど、これ、フォーラムの主催・運営にあたる学生は、やって当たり前の話だよね?
南井さん:はい。
石渡:でしょ?まさか、フォーラムを主催・運営しておいて「パネルディスカッションの構成を悪くする」学生はいないよね?
南井さん:当然です。
石渡:「フォーラム後に実施したアンケート」「フォーラムに参加した企業の実店舗に来店者あり」という話も、南井君の話ではなく、フォーラムの話でしょ?
南井さん:はい…。
石渡:つまり、君が最初に書いたものは主役は学生フォーラムそのもの。ところが、企業がエントリーシートで求めるのは、お題が自己PRでもガクチカ(学生時代に力を入れたこと)でも、学生個人の話。決して、イベントの話を知りたいわけじゃない。そこで、改造例では君を主役に変えた、というわけなんだ。
 

●石渡解説
学生フォーラムや大学祭、各種イベントの主催・運営にあたる学生は、成功例が大きすぎるあまり、その成功例のイベントについて延々と書いてしまいがちです。それでいて学生個人の話はあまり書きません。これでは、企業が書類選考で求めている内容とかい離するから、落ちてしまいやすいのです。

 
石渡:イベントが成功したのはいいネタだと思う。だけど、その成功例の大きさから、成功例だけ書いて学生個人の話をカットして落ちる、というのが君のような学生の敗因パターン。それを変えるだけで、書類選考も結構変わると思うよ。
南井さん:書くネタがたくさんあるときはどうすればいいですか?
石渡:400字程度ならディテールを出せるのはせいぜい1ネタか2ネタ。全部書こうとせずに、絞って書くしかないね。
南井さん:ありがとうございました!
 

●今回のまとめ
・イベント主催の学生はイベントの成功例に頼りがち。
・イベントの成功例ややって当たり前の話だけでまとめるから学生個人が見えず、落ちてしまうのがよくあるパターン。
・イベントの成功例に頼りすぎるのではなく、学生個人の話を中心として学生個人を主役にするべき。

<お知らせ>
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jobrass_magazine@aidem.co.jp
 
 
【講演情報】
 

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【筆者プロフィール】

石渡嶺司(いしわたり れいじ)

 
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
3月からJOBRASSマガジンの他、日本経済新聞サイト(日経カレッジカフェ)でも連載開始。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。
9月15日に『大学の学科図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)刊行予定。

 

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