• 2023.06.1106:00
  • インタビュー

5分で身につくブラック企業・ホワイト企業の見分け方

SNSの普及により、日常的に企業のコンプライアンスが問われる事案が発生しています。

過酷な労働を強いられる、ハラスメントや差別が横行する、モラルに欠ける言動・行動が起こる……等々。

一方で、まだまだ企業の中身はブラックボックスであることが多く、せっかくの新卒というレアカードを切るには不安なブラック企業・グレー企業も存在しています。

今回は、年間200件以上の求人票(企業・採用情報)を査閲し、累計1,000社以上の企業説明会を観覧してきた株式会社アイデムの松田さんに「ブラック企業・ホワイト企業の見極め方」を伺いました。

<目次>
1. ブラック企業を見極める!事前に確認すべき7項目
2. 口コミの活用方法と注意点
3. 年収、休暇、残業時間… 聞きにくいことを聞く方法(例文あり)
4. 第三者の活用もおすすめ!

   1. ブラック企業を見極める!事前に確認すべき7項目

筆者:
就活生が企業を探すとき、ナビサイトを中心に情報収集を進めると思いますが、注意すべき点はありますか?

松田:
まず大前提として、就職情報サイトや企業HPでは「ポジティブなこと」しか書かれていません。

もちろん企業が虚偽や誇張のためにマイナスなことを排除しているわけではなく、あくまで自社に興味を持っていただく段階だからそうしているわけです。

だからこそ、文章やキャッチコピーだけを読んで決めるのではなく、実際に足を運んで確かめてほしいと思っています。

筆者:
確かに、どの企業も「アットホーム」、「風通しが良い」、「成長中」という言葉が並びますね。

松田:
そうなんです。実に便利な言葉なので多用されていますが、「どんなふうにアットホームなのか?」をインターンシップや説明会で感じ取ったり聞いてみたりする必要は大いにあります。

筆者:
他にも確認すべきことはありますか?

松田:
私が企業・採用情報を確認する際に、着目する項目は7つあります。平たく言うと「この会社大丈夫かな?」という指標です。

[su_box title=”7つの指標” box_color=”#00a0e9″ title_color=”#ffffff”]

1.従業員数と新卒採用人数の割合
2.従業員数と売上高
3.3年以内の離職率
4.固定残業代の相当時間
5.月平均残業時間
6.年間休日数
7.平均勤続年数・平均年齢

[/su_box]

 

1.従業員数と新卒採用人数の割合

筆者:
これはどういうことでしょうか?

松田:
新卒の割合が大きい企業は要注意です。

就職情報サイトでは、殆どの場合、企業の従業員数と採用募集人数を掲載しています。例えば従業員数が100名の会社で、募集人数が50名だったらどう思いますか?

筆者:
多いですね……。人手が足りないのかな。

松田:
いくつか想像できることとしては、
1)急成長による人員拡充
2)離職者を見据えての大量採用 です。

「過酷な環境下で圧倒的に成長したい」という方でなければ、あまり推奨することはできません。

急成長中で投資的に人員を増やすことはよくあることですが、さまざまな要因により事業の衰退や成長スピードが緩んでしまうことも多々あります。

そうなると、真っ先に削減対象になるのは人件費となります。

古くはリーマンショックや大震災、新型コロナウイルス等、人類が予知できない要因は多々あります。従業員数に対する新卒採用人数の割合が大きい企業に入社する場合は、そのリスクを踏まえておくべきでしょう。

筆者:
なるほど。もう一つ、「離職者を見据えての大量採用」とは何でしょうか?

松田:
単純に新卒の離職率が高い場合、多めに入社人数を確保しておくという戦略です。採用での見極めよりも、入社してからふるいにかけるという意味合いもあります。

筆者:
どういう会社が多いですか?

松田:
一概に言えませんが、高い目標が課せられる営業職に多いです。企業によって異なりますが、不動産、保険、人材等の業種は比較的間口は広いものの、入社後に苦労する方は多くいらっしゃいます。入社1年で半数以上がいなくなる企業もざらにあります。

 

2.従業員数と売上高

筆者:
従業員数と売上高というのは、一人当たりの生産性を見ているんでしょうか?

松田:
その通りです。極端な話、従業員数が100名で売上高が100億円であれば、一人頭の稼ぎが1億円となります。こんな企業は仕事の規模の大きさや商品・サービスの安定感、裁量権の大きさを感じます。

加えて確認できるのであれば、利益率も把握しておきたいところです。売上が100億円でも利益率が1%なのか10%なのかでは、会社の財務基盤の盤石性や社員への報酬(年収)にも大きな差となって表れる可能性が高いです。

筆者:
企業情報サイトやHPでは売上が非公開の企業も多いんですが、その場合はどうすればいいですか?

松田:
手っ取り早いのは説明会等に参加することです。そこでも会社の業績が分からない場合、私だったら不信感を覚えます。

正直、ビジネスモデルや業績がわからない会社で働くなんてやめたほうがいいとさえ思います。

説明会に参加するのはちょっと……という場合は、商材・ビジネスモデル・従業員数などから推測することもできます。

例えば都内に10店舗展開しているスーパーマーケットだと、1店舗あたりの客単価、1日あたりの客数、営業日数でおおよその売上高が推測できますね。

ただ、これが医療機器の専門商社の場合はどうでしょうか?

レントゲン1台の価格は?1カ月に何台売れるのだろう?と考えても、なかなか解までたどり着きません。素直に説明会に参加するのがよいでしょう。

 

3.3年以内の離職率

筆者:
離職率はわかりやすいですね。高ければ高いほど、ブラック企業なのかな、と。

松田:
その前に離職率の高低を判断する基準を知っておくべきかと思います。よく3年以内の離職率は3割といわれますが、業種と企業規模によって大きく違うんです。

松田:
厚生労働省のデータでは、業種・企業規模によって、なんと30~40%も離職率にが出ています。

大卒離職率が高い上位5業種▼

離職率が高いのは、接客・サービス業務を主とした業種が多く上位に表れました。

*生活関連サービス業:
理容・美容・冠婚葬祭・娯楽など

大卒離職率が低い上位5業種▼

離職率が低い業種では、1位と2位にインフラ・資源系がランクイン。

*鉱業・採石業・砂利採取業:
鉱業には金属・原油・天然ガスなどを含む

企業規模別の大卒離職率▼

企業規模(従業員数)が大きいほど、離職率は低いという傾向が顕著に表れました。

上記の特徴を押さえておくと、志望企業の離職率の高低を判断する指標として使えます。

例えば、1,000名以上のインフラ系の会社の離職率が30%だったらどう判断しますか?

筆者:
……高いですね。

松田:
そうですね。最近は就職情報サイトでも3年以内の離職者数を掲載している企業も多いので、気になるようでしたら確認してみてください。

※上記表は、令和2年度の厚生労働省の調査データより筆者がまとめて掲示しております。

 

4.固定残業代の相当時間

筆者:
固定残業代は何となくわかりますが、相当時間とは何のことでしょうか。

松田:
そもそも固定残業(みなし残業)とは、あらかじめ会社側が、●●時間の残業を見据えて定額の残業代を支払うことです。

[su_note note_color=”#fbf6d8″ text_color=”#593d48″ radius=”9″]
月給:240,000円
※固定残業代35,000円(20時間相当分)を含む
[/su_note]

と記載がある場合は、「残業をしても、しなくても」月20時間の残業代が支払われます。もちろん、25時間の残業となっても、超過分の支払いがないと企業は罰せられます。

ここで注意したいのが、「●●時間相当分」です。

例えば、「45時間相当分」と記載がある場合は、そのくらいの残業時間を想定しておいたほうがよいでしょう。

筆者:
これ、残業してもしなくても支払わなければならない企業に、固定残業制を導入するメリットはあるんでしょうか?

松田:
本来、固定残業代を導入する企業側のメリットは、給与計算の簡略化や人件費予測のしやすさ、時間外労働の抑制目的などがあります。

一方で、初任給を大きく見せることで、求職者の応募増を狙っている企業も見受けられますので、ご用心ください。

固定残業代が高く、基本給が低い場合、賞与も低い可能性があります。

 

5.月平均残業時間

筆者:
残業つながりでお聞きすると、月平均残業時間はどんなことに注目すべきなんでしょうか?

松田:
注目すべきというわけではないんですが、鵜呑みにしてはいけないということです。

働き方改革が叫ばれて以降、平均残業時間の積極的な開示がなされています。また、多くの企業でも残業時間抑制の動きが強く見えますね。

ただし、就職情報サイト等に掲載されている「月平均残業時間:20時間」だけを見て、「あ、残業は1日1時間くらいか」と思いこみを持ってはいけません。

この数字ですが、あくまで「平均」です。

営業も総務も人事も生産管理も技術者も、いわば全社員を含めて算出されているケースが多いんです。

それに加えて、多くの企業では繁忙期・閑散期というものがあります。同じ会社であっても部署によってその時期が異なることも多々あります。

筆者:
確かに、技術者の納期や採用担当者の活動時期、年度末における経理、と職種によって忙しい時期は違いますね。

松田:
そうです。以前、皆さんも名前を知っているような有名企業の採用担当者さんとコッソリお話したんですが、繁忙期の特に忙しい月は、残業が200時間に到達することもあると。

後日、就職情報サイトの平均残業時間を見ると「13時間」となっていました。

筆者:
13時間だと思って入社したら200時間あったって、相当なギャップですね……。

松田:
なので、繫閑の差や配属されうる部署の忙しさについては、説明会等のフェーズで確認したほうがよいかと思います。

 

6.年間休日数

筆者:
年間休日数も掲載している企業は多いですね。

松田:
そうですね。これも離職率と同じで指標を知っておくべきかと思います。

そもそも、「年間休日」とは、「企業」が定める1年間の休日数の合計のことです。そのため休日数は企業によって異なります

有給休暇、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、バースデー休暇など企業が独自に導入している休暇は含まれません。

筆者:
それでは、年間休日が120日で、年に10日有給が取れて、リフレッシュ休暇が5日間ある企業は、1年で休みが135日もあるということですね?

松田:
そうです。厚生労働省の調査によると、令和3年度の産業全体での平均は110.5日でした。

ちなみに土曜日と日曜日と祝日を合わせると、だいたい120日前後です。

なので、暦どおりに営業するお仕事であれば、約120日が平均だと思っていいです。

シフト制のお仕事(土日祝日関係なく営業する接客、販売、サービス等)の場合は、100~110日が多いです。

筆者:
ということは、法人営業職で年間休日が110日だったらブラックだし、介護職で120日以上休みがあったらホワイトとも言えますかね?

松田:
断言はできませんが、「なぜだろう」と調べたり、聞いてみる価値はあります。

 

7.平均勤続年数・平均年齢

筆者:
最後に、平均勤続年数と平均年齢です。これはどんな点に注目すべきなんでしょうか?

松田:
これは皆さんも想像できると思いますが、勤続年数が長い会社は、離職や採用がそれほど多くない会社です。

一方で、年数が短い会社は、離職が多い場合だけではなく、設立して年数が浅い企業、採用数が多い企業が該当してきます。

個人的な感覚値では勤続年数が10年を超えていると、少なくとも怪しい会社ではないなと判断します。

ただ、転職も10年前と比較すると増加傾向にありますので、これからどんどん短くなっていくんじゃないでしょうか。

筆者:
なるほど。平均年齢はどのくらいが組織としてちょうどいいんでしょうか?

松田:
良い悪いの判断は個人に任せるとして、「早く成長したい」「裁量権が欲しい」「若くして活躍したい」「フレッシュな職場がいい」というのであれば、平均年齢が若い会社が向いているかもしれません。

逆も然り、「じっくり成長していきたい」「長く働きたい」「年長者から技術や知識を学びたい」「安定した企業がいい」というのであれば、平均年齢が高い会社を見てみましょう。

  2. 口コミの活用方法と注意点

筆者:
最近では口コミサイトもいろいろありますが、活用してみても大丈夫ですか?

松田:
もちろん大丈夫です。人生の大切なファーストキャリアを選択するので、どんどん活用していいと思います。

口コミサイトを信用するな、という声もよく聴きますが、今の時代、飲食店もホテルもネットの買い物も、映画も、口コミ評価を見て決めることが多いですよね。

ただし、これらの娯楽サービスと異なる点として注意すべきなのは、以下の2点です。

1)退職(予定)者が口コミを書く
例えば、仕事で嬉しいことがあって、衝動的に口コミを投稿することはあまりないのではないでしょうか。

口コミを投稿するのは、転職を検討している方が多いです。というのも、口コミを閲覧する際に、現職の口コミを投稿しなければならない場合があるためです。

自分の会社に何らかの不満があるから転職を検討しているのであって、必然的にネガティブな意見が集まりやすくなります。

2)大企業ほど実態と乖離しやすい
従業員数が多く、部署や職種も豊富な企業であればあるほど、一従業員の投稿がどの程度参考になるかという疑問も生じます。

前述した通り、有給の取りやすさや繫閑の時期など、部署や職種によって大きく異なる場合が多々あります。

筆者:
なるほど、あまり参考にはならないんでしょうか……?

松田:
参考にできる点は、企業の体質(コンプライアンス意識、風通しの良し悪し、就業規則や企業ルール)や福利厚生などでしょうか。

いずれにせよ、口コミを鵜呑みにするのではなく、その実態をうまく企業に質問できるとスッキリすると思います。

  3. 年収、休暇、残業時間… 聞きにくいことを聞く方法(例文あり)

筆者:
では、いかに聞きにくいことを、企業側に答えてもらうか、そのテクニックをお聞きしてもよろしいでしょうか?

松田:
ここでも前提として、まずは正しい質問のフェーズをお話します。

筆者:
フェーズとは何でしょう?

松田:
企業に初めて会う説明会やインターンシップのフェーズでは、質問がしやすく、選考や面接に進めば進むほど、ざっくばらんな質問ができなくなります。

例えば「働いている社員の雰囲気は?」「御社の女性の産後復帰率は?」という質問は、人事に聞けても社長には分からない質問かもしれません。

加えて、選考が進めば進むほど、質問の中身によっては「減点(マイナス評価)」もあるので、注意が必要です。

皆さんも察しているように、選考フェーズに入ると、福利厚生待遇面に関する質問はあまり良い顔はされません。

筆者:
逆を言うと、説明会や座談会などでは聞いても大丈夫なんでしょうか?

松田:
私の経験でいうと、問題ないと思います。私もよく業務の一環で会社説明会に参加しますが「何でも聞いて大丈夫!」というスタンスの採用担当者は多いです。

ただ、聞き方は「配慮」しましょう。初対面の人に「年収はいくら?」とは聞きませんよね。

よくある質問の例文を作ってみました。合言葉は「ぼかし、比較、興味、PR」です。

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