• 2017.08.0811:30
  • 面接/筆記/ES対策

【石渡嶺司コラムvol.16】エントリーシート改造講座 「体育会系はレギュラー・主将だと勝ちやすい?」

エントリーシート改造講座5回目の今回は体育会系についてです。
 一般的に体育会系は就活に有利、とされています。ところが、同じ体育会系でもESが通過する学生もいれば、そうでない学生がいます。
 それから、当の体育会系の学生からすれば、諸説入り乱れる噂に戸惑います。
「レギュラーなら通りやすい、と聞いた」
「やはり団体競技なら有利。個人競技は不利らしい」
 では、実際のところはどうか。そして、体育会系ネタを書くとしたらどうすればいいか、解説していきます。
 

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今回の参加者
 
▽犬山達郎さん(日本大学)
※名前は仮名です
 
犬山さん:よろしくお願いしますっ!
石渡:元気がいいね。体育会系?
犬山さん:はい、サッカー部です。エントリーシートを添削していただきたいのですが、やはり、大学時代の話を書いた方がいいのでしょうか?
石渡:見る前から質問?うーん、まあ、諸説あるけど、できれば大学時代の方がいいかな。学生なんだし。ただ、設問によっては、高校時代の話でも十分だけど。
犬山さん:そうですか、僕が書いたのは高校やそれ以前の話なんです。
石渡:なるほど、それでは拝見しましょう。
犬山さん:はい、こちらです。志望企業は商社の総合職、お題は「これまでに頑張ったこと」です(制限文字数・400字)。
 
●犬山さん・作成:

私は、サッカー部を9年間、続けてきました。小学生の時はサッカー少年団に入りキャプテンでした。サッカー少年団を入れると、サッカーは15年間、続けています。中学生のときもキャプテンでしたが、高校と大学では特に役職にはついていません。一番大変だったのは中学生の時で、チームを取りまとめるキャプテンとして尽力しました。チームを元気づけるため、できるだけチームメイトや後輩に声を掛けるようにしました。その結果、チームも優勝することができて、目標を達成しました。チームをまとめるにはコミュニケーション能力が必要です。それから、ときには厳しいことをあえて言うリーダーシップ能力も必要です。私は中学時代のキャプテンの経験をもとに貴社でもリーダーシップ能力を発揮したいと考えております。(333字)

 

●石渡解説
サッカーが好きなんですね。
そこはよくわかりました。
それから、小学校・中学時代は光り輝いていた、と。ただ、高校から大学にかけては役職に就けず、不遇だったのかな、と。
キャプテンなど役職に就けなかったことがそんなに不満だったのか、そのあたりを聞いていきましょう。

 
石渡:犬山君は小学校・中学校時代が一番良かった?
犬山さん:そうですね。キャプテンでしたし、周囲からも慕われていました。高校、大学はそれほど大したことはやっていないので…。
石渡:役職に就いていないことは不満だった?
犬山さん:いえ、そんなことは。高校、大学ともレベルが高くて。他の選手より技量が劣ることは自分がわかっています。だから役職に就いていないことも納得していますし、そこに不満はありません。
石渡:高校、大学の話をほぼ書かない、ということはあまりいい思い出ではなかった?
犬山さん:頑張ってきたことは僕にとっていい思い出です。
石渡:いい思い出なのに、それを書かない、となると、よほど不幸だった、とか、色々考えてしまうのだけど、どう?
犬山さん:えっ…。
 

●石渡解説
400字以内の指定で333字。67字も空いているのに、書いている内容は小学校・中学校の話だけ。大学時代はほぼ触れていません。となると、高校、大学ではよっぽど悪い思い出しかない、としか思えないのですが、そうではないようです。

 
犬山さん:小中高の話を書くのはダメ、ということでしょうか。
石渡:書いちゃダメ、というわけではないよ。この企業のお題も「これまでに頑張ってきたこと」だからね。大学の話ではなく、高校全の話を書いても問題はない。ただ、中学校時代のキャプテンの話も、ちょっと平凡すぎる割に長すぎ。となると、高校・大学ではよほど何もなかったかな、と勘繰ってしまうのさ。
犬山さん:実は役職に就いていた方が有利、と聞いたのです。役職だと小・中とはあっても、高校・大学以降はないので、だったら中学校の話、と思いました。
 

●石渡解説
役職アピール、いまだに体育会系を中心に引き継がれているようです。書きやすいことは書けるので学生からすればいい選択と思えるのでしょう。ただ、役職を強調しすぎると、学生本人のエピソードが薄まってしまいます。

 
石渡:大学のサッカー部では、どんな感じだった?楽しかった?つらかった?
犬山さん:あー、楽しかったです。練習はしんどかったですけど。
石渡:チームの雰囲気はどんな感じだった?
犬山さん:僕からすれば、技術が高い代わりに、ちょっとおとなしい点が気になりました。ちょっとミスが続くと、モチベーションも下がってしまって。
石渡:そういうとき、犬山君はどうしたの?
犬山さん:声出しですね。試合に出るレギュラーでも、ベンチにいても、どんどん声を出して、雰囲気をよくするようにしました。ヤジ将軍、なんて言われたこともあります。
石渡:声を掛けると結構変わる?
犬山さん:そうですね、試合中にも、「あのパスはないだろ」とか、相手を委縮させてしまうタイプがいます。私が「どんどん出せ~」とか、前向きな声出しをすると、結構変わりますね。その逆もありますし。
石渡:逆って?
犬山さん:相手チームにも、モチベーションが落ちている選手がいます。たとえば、右サイドのディフェンダーがへばっていたら、左サイドにボールが集められていても、「右に出せ!」とか。それで得点につながることが結構あります。
石渡:結構、チームメイトや相手のことを観察するものなんだね。
 

●石渡解説
聞きこむとネタが出てくるいつものパターンです。犬山さんは観察眼があることが判明。リーダーシップ能力というよりは観察眼とかコミュニケーション能力の方が優れているのではないでしょうか。

 
石渡:犬山君は観察眼に優れているんだね。
犬山さん:自分で言うのもなんですが、そこは自信があります。それと、もう1点、自信があって。
石渡:ほう。
犬山さん:割り切る力、と言いますか、合理性はあるかな、と思います。
石渡:どういうこと?
犬山さん:私の場合、高校ではキャプテンになれず、役職にも就けませんでした。ただ、意外と腐らなかったです。技量の違いなどは、はっきりとしていましたし。
石渡:それが合理性?
犬山さん:はい。別にみんながみんな、キャプテンなり副キャプテンなりに、なれるわけではありません。なれないから、と言って腐るのもどうかな、と。それなら、自分にできることをやる、チームのためにできることをやって、チーム全体を盛り上げる方が前向きかなあ、と思いまして。
石渡:将棋の駒みたいに割り切った、ということだね。
犬山さん:駒でいいかな、と。中学生のキャプテンだったとき、我の強いタイプに苦労しました。逆の立場になったとき、それはないかなって。それよりも、与えられたポジションで頑張り、チームを第一に考えた方が、と。それが合理性です。
石渡:高校時代から、そういう割り切りができたの?なんかすごいね。
犬山さん:中学生のときの経験と、それから実はスポーツ漫画の影響です。
石渡:いや、それでも大したものだよ。で、そういう話をなんで書こうと思わなかったわけ?
犬山さん:うーん、やはりキャプテンとか役職とか、わかりやすい話の方がいい、と噂に聞いたのでそれに影響されました。
石渡:せっかく、犬山君らしい話があって、企業も欲しがる人材のポイントに当てはまるのにもったいない。
 
●石渡・改造例:

私はサッカーを小学校から大学まで15年続けています。サッカーで私が一番こだわるのは、チームを第一に考えることです。小学校、中学校ではキャプテンでしたが、高校、大学では特に役職に就いているわけではありません。そこでこだわったのが、チームのためにできることです。大学時代にはレギュラーから外れていた時期でも、腐らずに練習でも試合でも声出しを意識してやっていました。前向きな掛け声を出すことで、チームは活性化されモチベーションも落ちません。試合・練習後の用具のメンテナンスでも積極的に手伝うようにしました。役職に就くかどうかより、チームのためにできることは何か、大学でも、高校でもずっと模索していました。おかげで、サッカー以外でも所属するチームで自分のポジションはどこか、そこで何ができて何をやればチームを盛り上げられるのか、考えるようになりました。(371字)

 
犬山さん:キャプテンじゃなくても、うまく書けるものなんですね。
石渡:せっかく、大学時代、頑張ってきたのだから、それをちゃんと書くべきだよ。
犬山さん:ありがとうございました!
 

●今回のまとめ
・体育会系はキャプテンやレギュラーだからESが通過しやすい、ということはない。
・高校以前にさかのぼってもいいが、古すぎると大学時代はたいしたことはなかったか、と誤解される。
・役職無し・補欠でも頑張ってきたことを考えてみる。

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【筆者プロフィール】

石渡嶺司(いしわたり れいじ)

 
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
3月からJOBRASSマガジンの他、日本経済新聞サイト(日経カレッジカフェ)でも連載開始。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。
 

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