• 2017.04.1008:00
  • 就活入門

【中川淳一郎コラムvol.25】悩み相談)やっぱり「紙」の新聞って読むべきですか?

Q)やっぱり「紙」の新聞って読むべきですか?
長らく「やっぱり新聞だけは紙」「就活時には紙」などといわれたものですが、これだけネットでニュースを読むのが当たり前になっても、紙を読むべきなのでしょうか?

 
「べき」か「べきではない」かはよくわかりませんが、「読んで損はしない」と思います。どうせ、スマホで芸能ネタやらまとめサイトばかり日々読んでいるんですよね? そして、就活関連の情報を仕入れようにしても、結局は「就活生必読! 好印象を与える7つのポイント!」みたいな、他の就活生が読んでいそうなサイトを読んで何か勉強したような気分になる。でも、どうせ面接のライバルだって同じ記事を読んでいるわけですよ。
 
私の本職はネットのニュース編集ですが、基本的にウェブのニュースは「極端にたくさん読まれる記事」がアクセスの大部分を占める傾向があります。我々は「ホームラン」などと呼んでいるのですが、これらの記事は多分あなたの周りの大多数が知っている。そこで果たして知の差別化ができるか、ということを考えてください。
 
その一方、新聞の場合、とりあえず、24~40ページほどの雑多な情報がカテゴリーに分けられていて、見出しを見るだけで自分の興味のない情報さえ仕入れることができます。そして、あまりにも意外過ぎる情報をゲットすることもできます。
 
ところで私は、常に今の仕事をクビになったら何をしようか……といったことを考えています。収入源が断たれた場合に、それでも生きていくために何かをしなくてはならない。ただし、私は会社員には絶対になりたくありません。理由は、決まった時刻に通勤するのがイヤですし、誰かと常に一緒にいるのがイヤだし、組織の都合で人事異動させられたりするのもイヤだからです。
 
となれば、「ネットニュース編集」をやめた場合は、今のフリーランスの状態と同様に何か一人でやらなくてはいけない。そんな問題意識を日々持ちながら生きているのですが、3月3日の東京新聞に、こんなタイトルの記事がありました。「この人」という人物紹介のコラムです。
 
「山間地でアワビ養殖に取り組む 北嶋秀明さん(46)」
 
内容を読むと、浜松市の山間部の過疎地域で、地元民がアワビの養殖をしているという話です。北嶋さんは浜松市の職員なのですが、過疎地域の仕事のなさを問題視。〈「ありきたりでは注目されない」と、海産物のアワビを山で養殖する意外性で勝負したいと考えた。職場に水槽を持ち込み、ネットで買ったアワビの稚貝を育ててみると、無事、育った〉とあります。
 
養殖場は、もう使われていない旧学校給食センターで、地元住民が1000匹のアワビを養殖中とのことです。思わずこの記事、スクラップしてしまいましたよ。ネットだけで情報収集すると「山間部である過疎地の産業づくりにアワビ養殖」なんて情報を得ることは、かなり難しいでしょう。なぜなら、ネットは「自分の興味ある情報」しか収集できない作りになっているからです。
 
月額3000円~4000円で、思いもよらなかった情報を得られるのが新聞です。新聞を読む同世代が少ないからこそ、「知の差別化」のために読むことを推奨します。いや、読んでも損はないですよ。1回の飲み会程度の費用ですからね……とだけ言っておきます。
 
 

【筆者プロフィール】

中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
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編集者
 
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
 
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。

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